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TNFD提言に基づく情報開示

TNFD

Ⅰ はじめに

世界で多くの生物が絶滅しその多様性が地球規模で急速に失われつつあることは、地球温暖化と同様に深刻な問題です。2022年12月に開催された生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)では、2030年および2050年の目標である昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)が採択されました。
また、国内では、GBFを踏まえ、2023年3月に生物多様性国家戦略2023-2030が策定されました。2050年ビジョン「自然と共生する世界」、また、2030年に自然を回復軌道に乗せるために生物多様性の損失を止め反転させるネイチャーポジティブ(自然の保全・再興)の実現に向けて、企業がさらなる役割を果たすことが求められています。
ほくでんグループは、豊かな自然を有する北海道に根ざす企業として、「ほくでんグループ環境方針」に基づき、事業活動に関わる環境負荷を低減し、自然環境の保全・再興に努めるとともに、低廉で安定的なエネルギーの供給などを通じた地域経済の発展に貢献することで、「事業の持続的な成長」と「持続可能な社会の実現」を目指しています。

Ⅱ 北海道の自然

【国内のKBA】

国内のKBA

国際的な基準で認められる生物多様性保全の重要な地域(KBA:Key Biodiversity Area)は、国内では北海道が最も面積が大きく、全国のKBAの26.2%を占めており、多種多様な生物が生息しています。

【エリア別KBA】

エリア 北海道 東北 関東 中部 近畿 中国

四国
九州 南西諸島 合計
KBA面積
(万ha)
179 143 119 111 28 32 33 39 682
割合
(%)
26.2 21 17.4 16.2 4 4.6 4.8 5.8

「北海道の鳥」に指定されているタンチョウ

「北海道の鳥」に指定されているタンチョウ
(絶滅危惧Ⅱ類・環境省レッドリスト)

「幻の魚」と称されるイトウ

「幻の魚」と称されるイトウ
(絶滅危惧IB類・環境省レッドリスト)

写真は北海道ホームページより引用

Ⅲ ほくでんグループの事業概要

ほくでんグループは、電気事業に加え「省エネ促進」、「自然エネルギー・環境」、「土木・建築」、「資機材調達」、「ビジネスサポート関連」などさまざまな分野において、それぞれの専門性を生かしてお客さまのビジネスの発展に貢献しています。
親会社である北海道電力は、従前、発電、一般送配電、小売の電気事業を一貫体制で運営しておりましたが、電気事業法の改正により、2020年4月に発電、小売電気事業を担うこととなり、一般送配電事業については、分社化した北海道電力ネットワークが担うこととなりました。

Ⅳ 戦略

  1. (ⅰ)

    自然との接点の特定

    北海道電力における発電事業(水力発電、火力発電、原子力発電、地熱発電)および北海道電力ネットワークにおける送配電事業では、発電所や変電所、送配電線など多数の電気工作物を使用して電気事業を行っています。
    水力発電は、KBAを含め北海道内の広範囲な地点に電気工作物を設置しており、生物や水資源等、多くの自然資本と接点を持っています。
    火力発電は、化石燃料を燃焼し排ガスを大気に放出しており、自然への影響があると考えています。また、冷却水として大量の海水を使用しています。
    原子力発電は、温室効果ガス(GHG)を排出しない脱炭素電源である一方で、放射性物質を取扱う唯一の電源であり、地震などの影響を受けない強固な地盤に電気工作物を設置することが必要です。また、運転時は冷却水として大量の海水を使用しています。

    【発電所設置状況】

    発電所設置状況

    【北海道電力・北海道電力ネットワークの発電設備構成(2024年度末)】

      サイト数 設備容量構成比
    水力発電 50 19.6%
    火力発電 12 56.2%
    原子力発電 1 23.8%
    地熱発電 1 0.3%

    送配電事業は、KBAを含め北海道内のあらゆる地点に設備を設置しており、生物や森林資源等、多くの自然資本と接点を持っています。
    一方、小売電気事業では、北海道を基盤として主要都市に事業所を構え、電力の小売販売を中心とした様々なエネルギー周辺サービスを提供しております。また、2016年度以降、首都圏エリアにおいても電力の小売販売を行っています。しかし、発電事業および送配電事業と比較すると、自然との接点は少ないと考えています。
    したがって、今回、発電事業および送配電事業に焦点を当て、自然に関するリスクと機会について特定することとしました。

    【送電設備設置状況(187kV以上)】

    送電設備設置状況(187kV以上)

    【北海道電力ネットワークの電力流通設備構成(2024年度末)】

    送電線 電線亘長 42,933㎞
    支持物数 44,752基
    変電所 397カ所
    配電線 電線亘長 239,496㎞
    支持物数 1,486,051基
  2. (ⅱ)

    自然への依存・影響

    事業活動が生態系から受けるサービスにどれだけ依存しているか、また、事業活動が自然にどれだけ影響を与えているか、国際的ツールのENCOREの評価を参考に自社の電気事業における依存度、影響度を評価し、ヒートマップを作成しました。

    Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposureの略。金融機関が自然資本に係るリスクを把握することを狙いとして、自然資本ファイナンスアライアンス(NCFA)と国連環境計画 世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCMC)が共同開発し、2019年1月にリリースしたツール。

    【依存のヒートマップ】

    依存のヒートマップ

    自然への依存度・・・VH:非常に高い、H:高い、M:中程度、L:低い、VL:非常に低い

    【影響のヒートマップ】

    影響のヒートマップ

    自然への依存度・・・VH:非常に高い、H:高い、M:中程度、L:低い、VL:非常に低い

    ヒートマップから自然への依存、影響が大きい事業について分析しました。
    発電事業については、水の供給サービスや、洪水防止および浸食防止等の自然災害の防止サービスに大きく依存しています。
    一般送配電事業については、暴風雨・暴風雪の緩和や洪水防止サービスに大きく依存しています。また、自然への影響について、火力発電におけるGHG排出が気候変動に影響しています。

    【当社事業と自然への依存、影響の関係(評価HまたはVH)】

    当社事業と自然への依存、影響の関係(評価HまたはVH)

  3. (ⅲ)

    自然関連リスクと機会

    評価した依存、影響を踏まえ、電気事業における自然関連のリスクと機会(対応策)について特定しました。

    物理リスク、移行リスク

Ⅴ リスクと影響の管理

特定した依存、影響、リスク、機会を踏まえ、当社が管理すべきリスクと財務への影響、機会については以下のとおりと考えました。

【リスクの管理】

リスクの管理

【機会の管理】

機会の管理

Ⅵ 指標

(2024年度末時点)

カテゴリー 指標 開示項目  
単位
気候変動 GHG排出 GHG排出量 Scope1 1,154 万t-CO2
Scope2 0
Scope3 815
陸上、淡水、海水利用の変化 総空間フットプリント 発電設備、電力流通設備の土地面積(借地含む) 発電設備面積 105,498 千m2
流通設備面積 108,002
陸上、淡水、海水利用・変化範囲 火力・原子力発電所取放水温度差 7 ℃以下
汚染、汚染除去 排水 排水排出量 244.4 万m3
廃棄物の発生と処理 産業廃棄物の発生量 68.8 万t
産業廃棄物のリサイクル率 89.7
プラスチック汚染 廃プラスチック類排出量 0.8 千t
プラスチック再資源化率 92.8
非GHG大気汚染物質 NOX発生量 8.5 千t
SOX発生量 6.4 千t
資源の利用、補充 水不足地域からの取水と消費 ※北海道は水リスクゼロ 無し
陸・海・淡水から調達するリスクの高い天然商品の量 発電燃料消費量 石炭 411.6 万t
重油 26.2 万kl
軽油 1.5 万kl
LNG 43.5 万t

GHG排出量は2023年度実績(2024年度実績は、今後公表する「ほくでんグループレポート」の2025年度版に掲載を予定)

<環境への取り組み事例>

取り組み項目 概要(自然影響・財務影響)
送配電設備における希少生物の感電や衝突を防止するための設備対策、繁殖行為に配慮した工事方法の検討等、生物多様性に配慮した取り組み
  • 感電防止や電線への衝突防止設備の設置によるシマフクロウやタンチョウ等の保護【写真①】
  • 工事実施時における希少生物のカワシンジュガイおよびカワシンジュガイの繁殖に不可欠なヤマメの保全【写真②】
  • 発電所建設箇所における小動物等の住み家(エコスタック)設置
  • 個体識別番号(足環)を付けた希少猛禽類斃死体発見の連絡等、国の保護増殖事業に協力
  • 工事実施前に改変区域の外来種を把握し、種の拡散を防止
  • インクライン工法による天然記念物の原生林の保全
生態系に配慮した植樹・育樹活動等の取り組み
  • エゾエノキの植樹による国蝶オオムラサキの増殖・保全活動への協力【写真③】
  • 植樹・育樹活動を通じた林業専修学生との共創により、北海道の林業の明日を担う人材育成支援
  • 牧場跡地への在来樹種や広葉樹の植樹および苗のシカ食害対策の技術開発
  • 水源涵養林として社有林を維持管理
  • 周辺生態系を模したエコロジー緑化
  • ブルーカーボンの取り組みで藻場を創出
産業廃棄物の有効利用に向けた取り組み
  • 石炭の燃焼によって発生したフライアッシュ、クリンカをコンクリート混和材や路盤材として再利用
  • 国が運用する「土砂バンク」への登録による地域内の土砂の活用・循環推進
  • 配電線保守作業等で発生した伐採木を、飼育動物の餌として地元動物園へ提供

電柱への止まり木の設置

写真① 電柱への止まり木の設置

天然記念物のシマフクロウ(絶滅危惧ⅠA・環境省レッドリスト)が電線に接触し感電するのを防止するため、電柱頂部に「止まり木」を設置し、シマフクロウが安全にとまることができる場所を提供しています。一時は絶滅の危機に瀕していましたが、地道な保護活動によって個体数増加の兆しを見せています。

工事に伴うカワシンジュガイとヤマメの保全

写真② 工事に伴うカワシンジュガイとヤマメの保全

工事実施時において、絶滅危惧Ⅱ類(環境省レッドリスト)のカワシンジュガイの保全を行っています。具体的には、水力発電所の放流停止時に干上る可能性のある箇所や、水深が浅く凍結影響を受けそうな箇所に生息しているカワシンジュガイを、水深が確保されている流水部へ移動しています。カワシンジュガイは幼生期にヤマメ(サクラマス幼魚)等に寄生することが知られていることから、ヤマメの保護も同時に行っています。カワシンジュガイは、夏でも水温が20℃を超えない綺麗な川に住むため「清流の貝」として知られており、河川生態系の重要な指標となっています。また、一般的に50年以上生きると言われ、成長するのに非常に長い時間がかかることから、一度消えてしまった貝を元に戻すのは非常に難しいと言われています。

エゾエノキの植樹

写真③ エゾエノキの植樹

準絶滅危惧(環境省レッドリスト)のオオムラサキの増殖・保全活動に協力し、オオムラサキの食樹であるエゾエノキを植樹しています。オオムラサキは、勇ましく美しい姿等から、1957年に昆虫学会によって「国蝶」に選定されています。